地元勢にも期待が懸かる2年目の「ツール・ド・九州」 海あり山ありの2024年大会をプレビュー

コースの特徴

 すでに2025年大会の概要も発表されており、来年は長崎県佐世保市をスタートし、最終日が大分県と宮崎県にまたがって行われる。今後はコースが年によって大きく変わっていくとみられるため、今年限りという光景もあるだろう。小倉城クリテリウムも一区切りとなる。コースが毎年変化していくというのも、他のスポーツとは異なる特徴。現地観戦やライブ配信を通じてその時だけの思い出を眺めるのもよさそうだ。

 2024年大会は初日(10月11日)に北九州市小倉北区の小倉城周辺でお披露目の興行レースが行われる。UCI公認レースの公式戦としては翌日(12日)の大分ステージが「第1ステージ」となり、別府市の立命館アジア太平洋大学をスタートして日田市の周回コースにゴールする。13日の「第2ステージ」は熊本阿蘇ステージと別称し、景観の美しい阿蘇山周辺を走って南阿蘇村役場前にフィニッシュ。最終日(14日)の「第3ステージ」は福岡県岡垣町をスタートし、玄界灘を真横に見る周回コースを走って宗像大社(福岡県宗像市)の前で決着の時を迎える。

第0ステージ:楽しむための「小倉城クリテリウム」

 エキシビションレースとして行われるのが、初日の「小倉城クリテリウム」だ。クリテリウムは短距離の周回レースのことで、今年も小倉城周辺の市街地を25周する。非公式戦ながら選手たちは本気の走りを見せてくれるだろう。同じレイアウトで行われた昨年は兒島直樹選手(ブリヂストン)が勝利を飾ると、翌日の第1ステージでも勝利し、上述したようにポイント賞も獲得した。小倉での好走は翌日以降を占うものとなる。

 小倉城クリテリウムは目の前を何回も選手が走り抜けてくれるため、自転車レースならではのスピード感を間近で体感できる。イベントも多く開催され、観戦初心者が“箱推し”したいチームを見つけるのにもベストなレースだ。

 特に注目は地元勢。北九州市門司区の物流企業をメーンスポンサーとするVC FUKUOKA(VC福岡)は昨年のレースでも目立つ場面を作ったほか、今年は北九州市や福岡市でのPR活動にも参加して来場を呼びかけてきた。また、運営母体が福岡県久留米市を発祥の地とするチーム・ブリヂストンサイクリング、大分県を拠点とするスパークルおおいたレーシングチームなども九州に縁があるチームで、初日から活躍する姿を見せたいところだ。

2023年大会の序盤で飛び出した鎌田晃輝選手=2024年はJCLチーム右京所属=と南和人選手(VC福岡)。このように先行するグループを「逃げ集団」、後方の大集団を「メーン集団」や「プロトン」と言う

 ロードレースの試合展開を知るにもクリテリウムはちょうどいい。通常、ロードレースは前方に数人の逃げ集団を形成し、それをメーン集団(プロトンとも呼称)がフィニッシュまでに飲み込んでゴールになだれ込む。

 逃げ集団は呉越同舟で、地元レースだから目立つ位置にいたいとか、あわよくば逃げ切ってしまいたいとかの思惑の異なる選手同士がひとかたまりとなる。逆に実力で抜きんでている優勝候補たちはメーン集団の中。ロードレースは風との戦いとなるため、風よけとなるアシスト選手が多いメーン集団で勝負どころまでストレスなく走るのが鉄則だ。

 初観戦で訪れる場合は、まずは優勝候補になるような選手を見つけるといいだろう。その際に見るべきは集団前方ではなく、アシストに守られた選手たち。またゼッケンナンバーの下1桁が「1」の選手がエースとなることが多いため、選手の背中や自転車に付けられた数字もエース判別のポイントになる。ただ、エースが勝つにはアシストの献身性が重要になるため、結局はチーム全体を応援するほうが結果に結びつきそうだ。

2023年は万全の体制を築いたブリヂストンが終盤で主導権を掌握。アシストに守られた兒島直樹選手(前から4人目)と窪木一茂選手(同5人目)がワンツーフィニッシュし、チーム力を示した

 現地観戦の最大の魅力はスピードを体感できること。ロードレースは平均時速約40キロで、ゴール前などでは60キロ超、下り坂では100キロに迫る場合もある。その分、観客側もレースの安全確保には協力する必要がある。

 レーサーたちは思った以上のスピードで迫ってくるため、絶対に無理な横断をしない▽スマートフォンやカメラを路上に向けて差し出さない▽観戦禁止区域に入らない――などはレースの安全のために守らなくてはならない。レースへの関心の有無に関わらず交通規制にも従うようにしてほしい。交通規制区域の情報は大会主催者がウェブサイトや広報車を通じて紹介しているので、事前にチェックしておいていただければ幸いだ。

 今年のレース自体は、逃げの打ち合いになったあとは落ち着いて周回を重ね、最後は大集団での迫力あるスプリントフィニッシュになると予想する。勝利の最有力は「スプリンター」や「パンチャー」と呼ばれる脚質の選手たち。今年のツール・ド・熊野第3ステージで勝利した岡本隼選手(愛三工業)、9月28日に開催されたばかりの「おおいたいこいの道クリテリウム」で3位の岡篤志選手(JCLチーム右京)、同4位の孫崎大樹選手(キナン)などが候補に挙げられ、JCLチーム右京からVC福岡に移籍したベンジャミ・プラデス選手も上位に入る可能性がある。

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