地元勢にも期待が懸かる2年目の「ツール・ド・九州」 海あり山ありの2024年大会をプレビュー

第1ステージ:いきなりタフな「大分ステージ」

 国際レースとしての初日となる第1ステージは、標高約400メートルの別府市郊外をスタートし、由布市、九重町をアップダウンを繰り返しながら駆け抜けて、日田市の周回コースにゴールする。走行距離は138キロ。

 終着地の日田盆地は標高100メートル前後だが、スプリントポイントが置かれた長者原の高原地帯では標高約1030メートルに達し、高低差は激しい。長者原に至る途中や宝泉寺温泉の登り返しなど3カ所に2級山岳ポイントが設定されており、平坦区間がほとんどないというハードなコース設定となった。総合優勝を左右しかねない消耗戦になると予想され、かなり人数が絞られた状態でのスプリントで決着しそうだ。外国籍チームや国内強豪のJCLチーム右京が主導権を握る可能性は大きいが、九州勢は地の利を生かして先行する展開も作りたい。

 ところで、ツール・ド・九州では4種類のリーダージャージーが用意されている。4種類というのは、個人総合時間賞▽ポイント賞▽山岳賞▽ヤングライダー賞――の各賞だ。

青色が個人総合時間賞のリーダージャージー

 個人総合時間賞は総走行時間が一番短い選手(すなわち最も速く走った選手)に贈られる賞で、ロードレース大会では最大の栄誉がある。走行時間の長短を大きく左右するのは登坂区間であり、「オールラウンダー」や「クライマー」といった脚質の選手か、短いステージレースでは「パンチャー」と呼ばれる脚質の選手に向く。ただ、個人の力でこの賞を得るのは難しく、アシストの力が不可欠。エースに負担を掛けずに登坂区間に導いたり、大きく遅れないように守ったりして、チーム全員の力で獲得しにいく賞だ。

 ポイント賞はゴール地点とスプリントポイントの通過順位に応じて配分される点数の累計で競う。個人総合時間賞は一日でも遅れると勝負権を失ってしまうが、ポイント賞に走行時間は関係がない。そのため例えば第1ステージで総合の順位を大きく落としたとしても、第2ステージと第3ステージを前方でこなしてポイントを稼ぐと、ポイント賞では上位に入ることができる。こうした特性から、山岳ステージで遅れても、平坦ステージでポイントを重ねられる「スプリンター」に有利な賞だと言える。

 山岳賞は山岳ポイントの通過順位に応じて配分される点数の累計で競う。点数は登坂の厳しさによって異なり、今大会は最も厳しい1級山岳と、その次に厳しい2級山岳がちりばめられている。脚質としては「クライマー」が取りやすい賞ながら、実際には逃げ集団に入った選手が先に山岳ポイントを通過することになるため、賞を獲得する選手の脚質傾向は一定ではない。

 ヤングライダー賞は、個人総合時間賞のうち23歳未満の選手を対象にしたもの。国内外を問わず若手の台頭はめざましく、ヤングライダー賞を得る選手が年齢不問の個人総合時間賞まで獲得するケースもある。

 こうした選手それぞれの脚質は各チームがウェブサイトで紹介しているので参考にしてほしい。

 第1ステージは個人総合時間賞を目指すチームは遅れずに走りきることが重要になる。もしかしたら、三つ目の2級山岳ポイント(山浦)でライバルを振り払う動きがあるかもしれない。それ以外にも細かなアップダウンが多く、仕掛けどころが絞りきれないほどたくさんある。どのチームにとっても気の抜けないレースになるのは間違いがない。

別府市郊外の立命館アジア太平洋大学をスタートする

 選手たちにとっては地獄めぐりの別府を背にして走り出したのに、地獄を味わうステージになる。ただ彼らの心中とは裏腹に景色自体は非常に美しい。レースはYouTubeでライブ配信され、由布岳、由布院、九重の雄大な景観が映されるだろう。地足で走るよりは速く遠くに行けて、車よりは少しゆっくりと景観を眺められる自転車ツーリズムの魅力もきっと配信から伝わってくる。午前10時スタートで、お昼過ぎにゴールする。土曜日の午前のゆったりとした時間帯に眺めるにはちょうどいい。

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